はじめに
日本にはお盆という先祖を悼む季節が文化としてあります。
特に故人が亡くなってから最初のお盆…正確には故人の49日の法要が過ぎてから最初のお盆を初盆(=新盆)と呼びます。
この1年間、多くの音楽人が亡くなりました。
この記事を書いている2021年8月のお盆。
本当にここ最近のことで、日本の風習に倣えば未だ49日明けではないのですが、この訃報に驚かされました。
Slipknotというバンドの人気に火がついたのが2001年発売の2ndアルバム「IOWA」。
取り分け今回の奏法解説記事として取り上げた2トラック目(1トラック目はSEなので、実質1曲目)の「People = Shit」は当時のラウドロックを愛するキッズ達に衝撃を与えました。
当時学生だった筆者progreもその中の一人。
漠然とコピーバンドをやりたいなと思いながらも、特異な楽器編成や(特に)VoやDrの技術力の高さからなかなか機会はなく、大学時代サークルの先輩からお誘い頂いたのがとても嬉しく、良い思い出になったのを覚えています。
そう、このSlipknotというバンド、Drの必要とされる技術力が大変高いのは有名な話。
このバンドの創設メンバーであり、4thアルバムまで参加していたJoey Jordison。
私自身は主にギタリストでありますが、Slipknotというバンドに於いてはまずその圧倒的なドラムに衝撃を受けました。
はてさて筆者progre自身にJoey氏との血縁関係は勿論ありませんし、ドラマーと言うよりはギタリスト寄りなわけですが、メタルファミリーとしてこの季節に、この楽曲を弾きたいと思います。
奏法のポイント
※チューニングはDrop B (全弦1音半下げ&6弦のみ2音半下げ) です
※Young Guitar 2001年11月号のTab譜面を参考に音取りしています
ドロップBチューニング
全ての弦を1音半下げ、6弦を更に1音(=2音半)下げるドロップBと呼ばれるチューニングです。
(6弦→1弦) B → F♯ → B → E → G♯ → C♯
7弦ギターを使うのもあり
Slipknotの楽曲全般に渡り多く採用されているチューニングですが、6弦の最低音がBというのは7弦ギターのレギュラーチューニングと同じ音階になります。
普段から7弦ギターをメインとされているギタリストさんはこちらを採用した方が良いかもしれません。
筆者progreも今回の演奏動画ではご本人達に倣って6弦ドロップBチューニングで弾きましたが、冒頭に述べた学生時代にバンドでコピーした時は7弦ギターを使用しました。
弦のゲージを見直す
本家同様6弦ギタードロップBチューニングを採用する場合は、通常の9〜42や10〜46の弦では弦が緩々でとても弾けたものでは無いでしょう。
普段使っているゲージによってどのくらい太いゲージに張り替えるかは個人差があるので一概に言えませんが、私自身はSIT社の10〜52のゲージを使用しています。
7弦レギュラー時は9.5〜44の6弦セットに56のバラ弦を組み合わせているので、それよりは少し緩めですね。
実際に張ってみると数字からは見えない弾き心地の変化もあったりするので、色々と試してみると良いと思います。
ギター本体の調整が必要なことも
弦のゲージやメーカーを変える時は特にそうなのですが、ネックに掛かるテンションや弦高、ナットの溝などの調整が必要な場合がほとんどです。
特にナットの溝は、一時的にゲージを太くした時のためだけに換装するというのは難儀なものです。
ナットは音質にも関わってくる重要なパーツなので好みもありますが、ロックナットやゼロフレット採用・ベアリングが仕込まれているローラーナット等、ゲージの対応範囲がある程度広いギターを1本持っておくと良いと思います。
※勿論、チューニング毎に別のギターを用意しておくのもありですが(笑)
可変するBPM
この楽曲、BPMが一定では無いのは原曲を聴くと何となくお分かり頂けるでしょうか?
通常、数パターンのBPMをセクション毎に使い分けるという手法は存在しますし、そこそこ高機能のDAWであれば録音時にあらかじめ小節毎にBPMを設定しておけばクリックを曲中に変化させることも可能です。
…が、この楽曲、なかなかに厄介なBPMの可変が行われています。
※ご参考
Slipknot People = Shit BPM(テンポ) - 世界は一日にして成らず ~BPM(テンポ )計測 まとめ~
今回、演奏動画として収録するのに最も苦労したのがこれでした。
DAW側であらかじめ設定しようにもBPMが動き過ぎるんですよね(-_-;)
仕方が無いので、モニターヘッドフォンでオケを詳細に聴きながら無理矢理合わせる録音方法で演奏しましたので、所々明らかに合わなかった部分も出てしまいました。
ご本家は楽器構成にDJやサンプラーもいらっしゃるので、BPMがドラマーの感覚依存という可能性は低いですが、それにしてもこの可変BPMはレコードを録音する上ではかなり厄介かと思われます。
イントロやBメロの高速ピッキング (0:03〜 / 1:02〜 / 1:33〜)
ギターフレーズとして目立つのは各種リフとこの高速ピッキングでしょう。
上述の可変BPM問題でなかなか綺麗にキメることが困難なのが厄介です^^;
単純にピッキングスピードが速いというのも特徴です。
個人的にこの楽曲くらいなら(可変BPMが無ければ)なんとかなりますが、割といっぱいいっぱいなので、日々ピッキングスピードを上げる…ひいてはピッキングを安定させる努力は続けなければなと感じています。
Slipknotのギタリスト
さてこのバンド、DJやサンプラー、パーカッションがいたり、圧倒的なDrやVoが目立つ中でギタリストが相対的に劣っているのかと言うと、決してその様な事はありません。
これだけ激しい音楽性からは想像出来ない幅広い音楽性と、トラディショナルな志向のギターをメインで使うJames "Jim" Root。
バンドの音楽性や見た目通りの激しいギターワークでありながらも、裏付けされた技術が非常にクラシカルなシュレッドスタイルなのが少し以外なMick Thomson。
特にMickは日本のギター雑誌、ヤングギターで今でも有名(?)な名台詞を残していたり、とても理論的且つ合理的な練習方法を紹介していたりしています。
※当時タイムリーでヤングギター付属のDVDをを観て衝撃を受けました(笑)
最後に
この記事を書く少し前に似たコンセプトでAlexi Laiho氏(Children of Bodom)の追悼記事を書きました。
日本のお盆という風習を期に、自分の中でかなり影響を受けたと思われるアーティストの楽曲を改めて今の認識でコピーし直してみることで、故人へ思いを馳せるという目的がありました。
Alexi氏が亡くなったのは昨年末であり、少し前から思い立った企画ではあったわけですが、まさかJoey氏まで今年のお盆直前(7月末)に亡くなるとは想像もしませんでした。
多感な時期に聴いていたアーティストが若くして亡くなってしまうのは大変残念です。
彼らの音楽を聴き返しつつ、たまには演奏したりこの様な形に残したりして、後世に語り継いでいきたいものですね。
故人の安らかな眠りをお祈り致します。
これ程の長文を読んで下さってありがとう御座います!
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